現代

#7 千葉雅也「デッドライン」

日本には私小説というジャンルがある。 自然主義の隆盛とともに盛り上がりを見せたジャンルであるが、今はめっきり衰退したとされている。 しかし、この作品を「私小説」とせぬのであれば、他になんと言えようか。 ◆ ところで、「私小説」とはいかように定義…

#6 村田沙耶香「星が吸う水」

あらすじ 恋愛ではない場所で、この飢餓感を冷静に処理することができたらいいのに。「本当のセックス」ができない結真と彼氏と別れられない美紀子。二人は「性行為じゃない肉体関係」を求めていた。誰でもいいから体温を咥えたいって気持ちは、恋じゃない。…

#5 村田沙耶香「ギンイロノウタ」

あらすじ 極端に臆病な幼い有里の初恋の相手は、文房具屋で買った銀のステッキだった。アニメの魔法使いみたいに杖をひと振り、押入れの暗闇に銀の星がきらめき、無数の目玉が少女を秘密の快楽へ誘う。クラスメイトにステッキが汚され、有里が憎しみの化け物…

#4 村田沙耶香『マウス』

あらすじ 私は内気な女子です――無言でそう訴えながら新しい教室へ入っていく。早く同じような風貌の「大人しい」友だちを見つけなくては。小学五年の律(りつ)は目立たないことで居場所を守ってきた。しかしクラス替えで一緒になったのは友人もいず協調性も…

#2 河野裕『いなくなれ、群青』

あらすじ 11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凜々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。僕はどうして、ここにいるの…

#1 村田沙耶香「授乳」

あらすじ 受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。火曜に数学、金曜に英語。私を苛立たせる母と思春期の女の子を逆上させる要素を少しだけ持つ父。その家の中で私と先生は何かを共有し、この部屋だけの特別な空気を閉じ込めたは…